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当院の肛門外科外来について
いわゆる『痔(ぢ)』で困っている方は多いのに、『肛門外科』として専門に診察が受けられる病院は限られています。当院では、『痔(ぢ)』でお困りの方のお役に立てるように、『肛門外科外来』を行っています。
お尻が痛い、出血がある、イボが出ているなどのお悩みはありませんか?診療時間はご来院前にお問い合わせください。
はじめに
日本語は表現が豊かなので、『脱肛』と言っても、はれている、ふくれている、飛び出している、できものがある、など、いろいろな訴えで受診されますし、自分自身の目で見える部位ではないため、違和感があるものの、実際にどうなっているのか自分でもよく分からない、という方も多いです。
インターネットを見ると、良い解説、とても参考になる体験談などもある一方で、残念ながら、古い情報(昔の治療法)や偏った知識での解説、誤った診断・治療を受けてしまっている体験談なども見られます。
少しでも共通する症状があると、本当は違う別の病気なのに、その記事と同じ状態と思い込んで一喜一憂してしまうこともあると思います。
肛門という部位のため、他人に相談しにくく、インターネットで誤った情報も氾濫していることから、受診するには勇気がいるかも知れませんが、まずは診察に来ていただければと思います。
『肛門外科』という名称で、『外科=手術』というイメージがあるかも知れませんが、絶対に手術をするというわけではなく、本当に必要な時にはご提案し、手術以外の治療で良くなるものなどは、それぞれに合った治療法をご提案します。
困っている症状、心配な症状があれば、実際に診察をさせていただいた上で、必要な検査や治療をご説明、ご提案いたします。
主な病気
いぼ痔(痔核)
『いぼ』が出来ている、はれている、ふくらんできる、何か出来ている、飛び出している、といった症状や、出血、痛み、かゆみ、下着の汚れなどの症状が見られますが、程度が軽い場合は、自覚症状はなく、検診(直腸診や大腸内視鏡検査)などで指摘されて初めて気付く方もおられます。
本来は痔核のことを指しますが、直腸粘膜脱や直腸脱、皮垂、見張りイボ、肛門ポリープなどでも、同じような症状が出ることがあります。
解剖的な位置、成分などにより、あまり痛くないものと痛みの強いもの、あまり出血しないものや出血しやすいものなどがあります。
軽い痛みをかゆみと感じる場合や、直腸粘液が肛門付近に付着することでかゆくなる場合、あるいは、脱出や下着の汚れを気にし過ぎで、肛門を清潔にし過ぎ(温水洗浄便座で洗い過ぎ、トイレットペーパーでふき過ぎ)て、乾燥してかゆくなる場合などもあります。
ただ、いぼ痔が邪魔をして便が出ない、ということは滅多にありません。
基本的には良性疾患で、すぐに生命に危険が及ぶ病気ではないため、手術をして根治しなければならない、というものではありませんが、いぼ痔と思い込んでいて、実は大腸がんだった、ということや、出血を何年も放置していて、輸血が必要なくらい貧血が進むということもあります。
また、『嵌頓(かんとん)』と呼ばれる、痔核が飛び出したまま戻らず、肛門に絞め付けられて腐ってくるという状態になると、かなりの激痛を伴い、難しい手術になることがあるので注意が必要です。
軟膏の塗布や薬の内服で、気にならないくらいまで改善する方もおられますし、切除の手術ではなく、注射で治せる(ジオン注による硬化療法)ものもあります。
また、正式な切除だけでなく、結紮で血流を遮断し、痔をしぼませるという方法もあり、切除よりも手術後の痛みや術後出血の合併症も少なくなります。
あな痔
肛門(直腸)内から皮膚に細いトンネルができるもので、痔瘻のことを指しますが、肛門周囲膿瘍、直腸周囲膿瘍や、裂肛(きれ痔)を伴う場合もあります。
トンネルの入口と出口が開通している場合は、膿が出る(血が混じることもある)、下着が汚れる、という症状になりますが、出口が皮膚に開通せず、洞窟のような状態で身体の中で止まっていると痛くなったり、はれたり、熱が出たり、赤くなったりします。
完成した痔瘻は手術でしか治せませんが、できたばかりの新しい痔瘻の場合は、状態に合った処置(膿を抜く=切開排膿)や抗生物質の内服で治ることもあります。
目安は発生してから1カ月以内で、手術なしで処置や内服のみで治る確率は30%前後です。
手術方法は主に3通りで、範囲が小さく浅い痔瘻は切除(レイオープン)、あるいはトンネルを繰り抜いて縫って閉鎖する方法(くり抜き)の2通り、広範囲あるいは痔瘻が曲がりくねっている時は、必要な部分のみ切除して、医療用の輪ゴムのようなチューブを留置して少しずつ直していく方法(シートン法)となります。
きれ痔
裂肛のことを指しますが、何度も繰り返すと、その付近の組織が反応して、見張りイボとよばれる皮膚の突起や、肛門ポリープを伴うこともあります。
また、痔核が動くことで、牽引されて出来る裂肛もあります。
直腸・肛門の血流は豊富で、トイレの便座に座ると力がかかるため、数mmのキズでも派手に出血することがあります。
また、数mmでも、肛門は寝ても座っても圧力がかかる部位であり、排便時には肛門が拡張し、できたキズを広げるように動くため、強い痛みを感じます。
無治療でも、数日~数週間で自然に治癒することが多いのですが、軟膏の塗布や薬の内服で、治りを早められます。
手術が必要になることは少ないのですが、肛門が狭いことで裂肛ができやすくなっている場合や、痔核の動きで牽引してできている場合など、投薬だけで改善が乏しい時は手術を検討します。
その他
他にも肛門の病気はいろいろあります。
詳細は、『よくわかる大腸肛門科』のホームページによくまとめられており、監修をされている辻中病院 柏の葉の赤木 一成先生より、ホームページのリンクの許可をいただいております。
赤木先生の『よくわかる大腸肛門科』ページへ
よくわかる大腸肛門科のページへ肛門の病気を予防するには
温水洗浄便座の誤った使い方をしない
温水洗浄便座は、今や日本の誇れる文化の1つとなっており、確かに、弱めのモードで5秒くらい使用し、優しくトイレットペーパーでふき取ることは良いことです。
しかし、診察をしていると、強いモードで長い時間洗浄し、さらにトイレットペーパーで何度もふき取る方、浣腸のように肛門の中にまで水が入るように当て続ける方などがかなりおられることが分かりました。
極端な表現になりますが、犬や猫など動物は、排便後に完璧に肛門を清潔にすることはありませんが問題はなく、病気にもなっていません。
社会生活の中で、排便後、ふかずにそのまま、という訳にはいかないと思いますが、過度の洗浄により、肛門部の皮脂も洗い流されて乾燥し、かゆみや肛門の知覚異常をきたす場合があります。
トイレに長く座らない
通常の椅子に座った状態と違い、たとえ便を出すように力を入れていなくても、肛門むき出しの状態で便座に座る体勢は、ただ座っているだけでも肛門に負担がかかっています。
痔などの影響で、便がないのに便を出したいような感覚がする、あるいは、便秘は悪いことで1日最低1回は排便をしなければならないと強く思い込み、30分や1時間以上もトイレで頑張るという方や、トイレで読書をしたり、スマホをいじったりする方も多いと聞きますが、トイレの便座に座る時間は、目標5分以内です!
暴飲暴食をしない
いろいろと楽しみや付き合いもあると思いますが、極端な暴飲暴食は下痢の原因となり、当然、肛門には負担がかかります。
また、アルコールは出血・むくみを悪化させるので、控える方が望ましいです。
肛門の病気は、排便と密接に関係します。
排便が良好であれば、肛門の病気になる可能性も低くなります。
排便を良好にするには、ストレスをなくし、規則正しい生活をし、理想的な食生活を送って身体を冷やさないことが大切ですが、現実的には全てを満たすことは難しいと思います。
でも、トイレに長く座らない、暴飲暴食をしない、温水洗浄便座の誤った使い方をしない、という3点は、すぐに実践できると思いますし、実践すべきです。